アドラー心理学

アドラー心理学入門 よりよい人間関係のために』を読みました。

著者は岸見一郎先生。京都大学卒業後、専門の哲学と並行してアドラー心理学を研究。 2013年に刊行した古賀史健との共著『嫌われる勇気』が100万部を超えるベストセラーに。

長くなりましたが、自分への備忘録として主なタイトルとコメントを書き残します。

アドラー心理学の育児と教育

  • 育児と教育の目標:育児の行動面の目標は「自立する、社会と調和して暮らせる」これを支える心理面の目標は「私は能力がある、人々は私の仲間である」
  • 対人関係の中で考える:人間の悩みはすべて対人関係の悩み。
  • どこからではなくてどこへ:なぜという問いは心理学者でも答えるのが難しい。人生の課題に向かうには忍耐も努力もいる。が、解決能力がないと課題から逃れようとすることがある。その口実が原因論。そうではなく目的論で答える。
  • 行動の目的:闘う、攻撃的な子供は自分を実際よりも大きく見せ、成功と優越性を得ようとする。
  • どう対処するか:
  • 罰しない:罰の効果は一時的。罰せられると自分には能力がない、居場所がない、人々は私の仲間ではない、自分の敵だ、と感じるようになる。
  • 復習と無能力の誇示:大人がどちらが正しいかはっきりさせようなどといった権力争いに勝つと、子供は反抗をやめ非行に走る。自分に対して期待しないでくれとアピールする。こうなると解決困難。
  • 適切な行動に注目する:不適切な行動には一切注目しない。
  • ほめるのではない:上から下へ相手を判断し評価すること。下に置かれた人は愉快ではない。
  • 勇気をくじかれているということ:問題行動を起こす理由。愛情が足りないからではない。普通でいるという努力と忍耐を避けている。
  • 劣等感と劣等コンプレックス:全く無力な状態から脱したいと願い優れていようとすることは誰にでも見られる普遍的な欲求。この対極が劣等感。いずれも健康で正常な努力と成長への刺激である。ただしこれを追求すると病的になる(=コンプレックス)。
  • 普通であることの勇気:普通の人は優越コンプレックス、優越感を持っていない。しかし、優れていなければならないと考えるのは、根底に自分は劣っているという気持ちがあるから。このように普通であることを受け入れられない人は特別であろうとする。
  • 勇気づけ:勇気をくじかれている子供に対し、喜びを共有すること、自分の気持ちを伝えること。当たり前のことに「ありがとう」ということ。
  • 存在への勇気づけ:理想を頭の中から追い出し、目の前にいる子供から出発する。理想の子供から引き算するのではなく、ただ生きている状態を基準にする。
  • まず課題を分離するということ:人生の課題は本人が解決すること。「誰の課題か?」を問う。例:勉強は子供の課題、親が言うことは子供の課題に踏み込み衝突する。子供が勉強しないことが気になるのは親の課題。イライラしても子供に言えない。
  • 共同の課題:課題の分離をしたうえで、頼まれたら課題の解決にできるだけ協力する。
  • 結末を体験する:自分には能力がある、人々は自分の味方である、と感じるように援助するため。逆に、自分には能力がない、人々は自分の敵だと感じる可能性がある場合は、結末の体験に委ねてはならない。十分注意しなければならない。
  • 見守るということ:必要があればブレーキを踏めるように構えておくが、決して先回りしてブレーキを踏まないこと。
  • 優しくきっぱりと:力で抑えず根気よく話し合うこと。他方、課題を分離し、自力で課題に立ち向かえるのであれば不必要な介入はしない。

〇横の関係と健康なパーソナリティ

  • 対等の横の関係:伝統的な教育は子供を力で押さえつける。これは縦の関係。言葉で考えを伝える努力をしたか、その言葉遣いは適切か。
  • 言葉による問題解決:叱ったり罰したりするのは簡単だが、アドラーはあらゆる対人関係の場において問題解決の手段として認めない。手間暇はかかるが、一喝する副作用はあまりに大きい。
  • 競争と縦関係:縦の人間関係は精神的な健康を損なう最も大きな要因。自分をよく見せようとする努力をしなくてよい。
  • 自己受容:精神的な健康の条件の1つ。自分の現実に目をつぶるということではない。
  • 他者信頼:人々は私の仲間ではない、と感じていると幸せになれない。
  • 他者貢献:自分は全くの役立たずだ、では幸せになれない。自己犠牲を強いることではない。
  • どの条件も欠くことができない:他の人に貢献できる自分が受け入れられるのであり、貢献するためには他の人を信頼できていなくてはならない。
  • 他の人のことが考えられるということ:人が根本的に理想として持っているのは、共同体に受け入れられていること。受動的ではなく積極的に。

〇人生の意味を求めて

  • 人生の意味は自分で決める:すべて自分に責任があるという意味ではアドラー心理学は厳しい考え方。人生の意味、幸福には究極的には外的条件は何もない。
  • 他人を気にしない:非常に不自由な生き方を強いられる。絶えず人に合わせなくてはならない。10人いれば、2人は受け入れてくれる、7人はその場その場で態度を変える、1人からは良く思われない。このために心を煩わせる必要はない。
  • 失敗を恐れない:人からどう思われるかを気にすると、動くべき時に機会を逸する。自分が善しとして判断して行った行為について他の人がどう思うかは他の人の課題。やればできると言ったら決して勉強しない。やればできるという可能性を残しておきたいのであって、実際に勉強してできないという現実に直面することを恐れている。
  • 私は他の人の期待を満たすために生きているのではない
  • 今したいことをしているか:私は自分の思うままに生きたい、しかも周りの人が自分の人生の選択を許してくれるという選択肢はない。
  • 責任について:自分が権利を主張した結果起こるすべてのことを自分の行為の結果生じたものであることを認める責任がある。
  • 他の人は私の期待を満たすために生きているのではない
  • 自立について:できることは自分の力で解決する。できない問題には助力を求める。なんでも一人でこなすことではない。
  • 言葉を重視する:助力は義務ではなくその人の善意である。他の人に協力を求める必要があればはっきりと言葉に出す。
  • わからないと思って付き合う:アドラーは、そもそも相手を理解することは不可能だと考える。
  • 自分が人生を創っている
  • 楽観主義と楽天主義:何が起こっても大丈夫、何が起こっても悪いことは起こらない、失敗するはずがない、と思うことが楽天主義楽天主義は何もしない。悲観主義は状況に対する勇気を欠き、なんともならないと諦めて結局何もしない。楽観主義は、現実をありのままに見て、そこから始める。何とかなるかどうかわからないけれど、何ともならないと考えることはない、とにかくできることをやろうと思ってできることをする。できることをしてみれば、事態は変わるときは変わる。
  • できることから始めよう

 思い当たるところがいくつもありました。現実には大学受験を迎える子供たちに、すべて当てはめるのは難しいと思いますが、よいところを柔軟に取り入れていければ、少しは良くなるかもしれない、と感じました。