自戒②

昨日、妻が朝いちばんから息子に対して罵声を浴びせていた。最初は洗濯物をなぜ出さない、から始まり、だんだんエスカレートしていくのはいつものパターン。最後は、お前なんか帰って来なければよかった、と捨て台詞を吐いた。

息子のところに行ったが興奮して人の話を聞ける状態ではない。学校に行くと言って出て行ってしまった。

妻が怒りをあらわにしていたが、私にはどうすることもできない。とはいえ、息子がこのままでは潰れてしまう。私が話をすると、また上から目線で、となってしまうので、先日読んだアドラー心理学の本を見せ、教育の項目だけでも読んでみては、と言った瞬間、私に対して切れた。

娘が勉強している前だったので、自室に来るよう促し、自室で話を始める。

 

〇私への怒りの原因

・息子の成績が極めて悪い。このままでは留年。6月の個人面談で言われた。その時、あなたは面談の結果に関心がなかった。どうだった?となぜ聞かないのか?

・実家の墓の花立の修理依頼を失念したことに対して、「先祖をバカにした」とあなたは怒った。私があなたの実家にどういう思いでいるかわかっているのか?

〇引っ越しで失ったもの

・10年前、今のマンションに引っ越した。

・それまでは落ち着いて、安心して子育てができる環境があった。それをあなたはすべて奪った。

・似たような境遇の人がいた。夫が家庭を顧みない仕事人間とか。

・見ず知らずの土地に、雰囲気もわからないところで苦労した。似たような境遇の人がいなくて孤立した。

・小学校でも娘や息子のために闘った。子育てする環境ではない。下町の嫌な雰囲気。孤独だった。

ずっと追い詰められてきた。

・あなたは引っ越せば少しは子供たちにも向き合うようになると思った。全然変わらなかった。

・あげく遠距離通勤と長時間労働で体を壊した。

〇義母への恨み

・義父が今でいう発達障害のような人で、自分も苦労してきたと言ってくれなかった。

・結婚してから、よそよそしさに違和感があった。義父は、家を訪問してもすぐに自室に引きこもってしまう。プライドが高いのか自分のことを言わない。

・あなたがうつになり、相談したら「私は門外漢ですから」と突き放された。

・何年かして手紙が来た。精神科医でも手に負えない症状がある、と。

・最後看取ってあげた。なぜ私がここまでしないといけない。

〇私の人生返してよ

・わかっていれば結婚しなかった。母に申し訳ない。長女なのに家を飛び出した。今更帰れない。

・今の仕事は好きでやっているのではない。底辺の仕事、馬鹿ども相手に嫌になってくる。

・精神状態が心配な夫。ADHDの息子。だから私はカサンドラになった。もう疲れた。楽になりたい。

〇私のことをバカだと思っている

・人の話を何も聞かない。遠距離通勤して、家庭を破滅させた。あげく自分も破滅した。

・あなたは、調子のいいときは突っ走る。しおれたときにどうしようと泣き言をいう。

・引っ越しの時、仕事への向き合い方もそう、体調崩してからもそう。

〇息子は小さいころからおかしかった

・幼稚園の時から友達と遊べなかった。

・地元の発達障害学級では結局何もしてくれなかった。地域差がある。

・今も弱っちい子とフニャフニャしているだけ。本当の友達がいない。

・本人は理系に行きたがっているが、テストで数学が悪いと文系に回される。もう崖っぷち。

〇先祖をバカにしてと言うが

・あなたは私の先祖の墓参りをしたことがあるの?

・あなたの家族にいい思いはない。そのことを責めないが、事実を言っている。

〇なぜ今大学に行くのか

・娘が受験、息子が大変な時期に、なぜあえて大学に行きだした?

・相談を受けた際、どうせあなたはダメと言っても言うことを聞かないと思って、あきらめていた。

〇もう死にたい

・私は本当に疲れた。気が休まる日がない。

・私もおかしい。見ればわかるでしょ。

・これからいいことがあるとも思えない。

・あとは3人で頑張って生きてほしい。私より先に死なないで。私が殺したことになり迷惑。

 

以上のことを妻は私への怒りをこめて言った。私は涙をタオルで拭いながら、言い訳はせずに話を聞いた。妻に何を望んでいるのか尋ねたら、それを知らずに本気で聞いているのか? と切れられた。「安心して息子が育つこと」だと言われた。

 

妻は自室を出て行った。私は疲れ果てた。とにかく休みたい。何時間も横になった。妻も寝ていたようだが起きてきてから、私に聞こえるように罵声を上げ始めた。洗濯、炊事が嫌になってできないようだ。「全部押し付け、丸投げにしている。自分は体調が悪いと言えば許される。全部私。何かあれば全部私のせい。」

 

妻の話を聞いた時の私の涙は何だったのだろう。妻に申し訳ないという気持ちのはずだが、実感がわかない。罵声を受けたせいか、自分を傷つけないように、緩衝材がこころの前にある感じ。

面談の結果をなぜ聞かない?と問われハッとした。これまで似たような経験は何度もある。関心がないと思われたくない。しかし、気づいていない。本当に関心がないのか? その感受性がないのか?

 

そういえば、立食パーティーでの雑談がとても苦手。疲れるし、話の内容を覚えていない。

仕事以外の友達はいないし、できない。作ろうともしなかった。

すべて縦の人間関係。横の関係がほとんどない。

 

仕事上の人間関係が原因で鬱になったが、実は、無意識の領域にある「自己」の中に、「他者を思い、他者に貢献する」といった要素が極めて希薄なため、無理して人づきあいをしてきたが、業務の成果が部下のパフォーマンスに委ねられ、その結果責任を取るという管理職という立場に立った時、いよいよ自己のキャパを超えてしまい鬱になってしまったのではないか?

今は研究という立場でいるので、人間関係はそこまで求められない。それでも理由はともあれ直属の部下が二人やめている。

苦しいながらもなんとか克服しなければと思い、これまで必死に社交的に振舞おうとしてきたが、一時的な関係ならばうまくいくものの、家族のような長い関係、職場の上司部下のような濃い関係になると、結果的にうまくいっていないのは、自分の持って生まれたものなのか?

これまで自分を苦しめてきた正体に、一歩近づいた気がしたが、絶望感も強くなった。

これが10年間苦しんだ結論だとするとやるせない。人を思いやれない、そもそもそのセンサーがない。受容体がない。だから、いくら頑張っても人望がない、わかってくれない、となる。

自分の将来、家族の将来、どうなってしまうのか。本当によくなる姿が見えない。