自戒③

昨日の朝、妻は私に対して目を吊り上げ物凄い形相で怒りをあらわにした。

誰に怒っているの?「お前と世の中みんなだよ。私のことを利用しやがって。」利用なんてしていない。「お酒飲んで帰ると、昼間とは違うことを言う。昼間は本心を隠している。私が全部悪いように、私に全部を押し付ける。」

毎朝このような状況だが、特に今日は酷い。これを毎朝まともに受けていた息子は心底傷ついていると思う。息子は高校での面談で成績があまりに酷く、夏季の宿題を仕上げなければ進級は難しいと宣告された。以来、妻の心配がヒートアップしている。

 

私も昨晩、宿題の進捗が気になり、息子に進み具合を尋ねたら、息子は切れてしまいとうとう言わなかった。自分の課題でやらねばならないことは自覚しているのだが、進捗が芳しくないらしい。予定を立て見込みをつけながらでないと終わらない、ただそれは君は苦手なので援助するよと伝えたが、一方的に拒むのみなのでつい私も怒りをぶつけてしまった。

 

このとき、ふと思い出した。昨年部下が退職した。調子よくはいやります、と言うが遂行能力が乏しく中途半端で放り投げてしまう。ほとほと管理に手を焼いていた。上長には相談するも見て見ぬふり。そこで、上長にも宣告した上で、少し厳しめの躾も含めた対応の仕方に切り替えた。上からの成果の期待もあり、私も追い詰められた。相当下駄をはかせて報告をさせたりした。だんだん感情の抑えが鈍くなる。気を付けていたが、私も欧州出張があり不在となる前にある程度目途を立てさせようと命じた仕事に対して、厳しく対応したところ、出社しなくなり、そのまま退職した。

退職の意思表示を示した後、ようやく上長が動き始めた。私にはここぞとばかりに動いているように見えた。結局、本人の自主退職という形になったが、私は賞与査定を2ランク下げられた。私に責任を負わした形だ。評価が出てから鬱がぶり返した。後輩にもどんどん抜かれ、放っておくと惨めな思いでつぶされそうになる。

 

やっぱり私がダメなのだろう。やっぱり思い通りにならないと感情が切れてしまう。部下に対して怒りを出したのと、全く同じ精神状態だった。

もう一つ私がダメなところが出ていた。先日の墓の修繕手配を妻が失念した際に、つい「先祖のことをバカにして」と捨て台詞を吐いてしまった。この時の正直な心情とすると、墓参りしたときに不具合を見つけ、帰りの車の中から早速墓石屋に修理依頼をしたのに、急いでしようね、と話をしたのに、督促状が来るまで放置されていたので、しっかりしてほしいという意味からつい口走って出た言葉だった。

ずっと以前、子供が熱を出して病院に行かねばならないとき、私が会社の昇進試験を控えていたこともありイライラして「人の足を引っ張るな」と口走ってしまった。

職場でも新しく赴任した旧知の総務担当に、遠慮せず来てよ、と言った後、会話の中の何かのはずみで(完全に冗談で)「来んじゃねーよ」と話したことを所長に聞かれ、すごく怒られ翌日謝罪メールをしたことがあった。

 

以前、主治医からは、「発言が軽い。時々、人の話を聞いていないのかと思うような相手を怒らせる言葉が出てくるよ。」と言われ、全く自覚症状のない自分は何を言っているのか、という感じになったことを思い出した。

 

こうしてみると、明らかに症状として出ている。なんでこうなってしまうのだろう。無意識の中にある私の「自己」に、人の気持ちを理解するレセプターがやっぱりないのか?

 

10年位前か、とある上司から冗談とも本気とも取れない感じで「お前は人望がない」と言われた。今となってはピッタリの表現だが、当時は同期トップクラスを走り、自他ともに優秀な社員だったので、内心ビクッとした。無理して快活に振舞っている裏で抱えている鬱の症状、なぜかわからぬ地に足のつかない感覚、砕けた場での懇親に対する何とも言えぬ恐怖、これらを見透かされたようだった。

 

自己愛性、境界性、強迫性などのパーソナリティ障害にも当てはまるようだ。生きづらさのトンネルの出口は、まだまだ見えそうもない。